市販糸との違い

昔は、全て手紡ぎだった糸が、工業化され、機械で紡ぐ事により大量生産とコストダウンを実現しました。
市販糸のほとんどが機械で紡がれており、均一な太さで複雑な模様編みなどに向きますが、やや伸縮性に欠けます。
それに比べ、手紡ぎ糸は不均一な太さではありますが、それこそが手紡ぎ糸の良さであり、それによってシンプルな編み方でも充分に表情豊かなニットに仕上がります。手加減により、伸縮性も自在に調整可能です。

繊維に撚りをかけることで糸になるのですが、撚りを伝えるには、繊維に張りを持たせた状態にしなければなりません。しかし、張り過ぎると繊維が伸びきり空気も追い出し伸縮性の乏しい糸になってしまいます。糸が硬くて重くなってしまうのです。手紡ぎ糸は、手加減により、その張り具合を微妙に調整することで伸縮性に富んだ柔らかな糸になります。

羊毛の繊維は縮れており、その隙間に多くの空気を含むことで保温性を保てるようになっています。輸送の都合上圧縮された、原毛の繊維の隅々まで、紡ぐ前に充分空気を含ませる準備をすることで軽くて暖かな糸になります。

同じ市販糸で機械編みと手編みしたセーターやマフラーを比較すると、その違いが顕著にわかります。
機械編みより手編みの方がふんわりと軽やかに仕上がります。その理由は、糸を紡ぐ時と同様に、編む時の糸の張り具合に違いがあるからです。
編目を整えるためには、糸に一定の張りを持たせることにより、糸の供給をスムーズにすることが大切なポイントとなります。これは機械編みでも手編みでも同じです。
しかし、機械編みの構造上、糸の張りを強めにせざるを得ません。それに比べ、手編みはその張り具合を微妙に調節し、編目を整えるための張りは持たせつつも、その張り具合を必要最小限に保つことを可能とすることで、糸が抱き抱えているいる空気を追い出さずふんわりと編み上げることが可能なのです。

「手加減」とはまさにこのようなことを言っているのだなと思います。